研究科長の挨拶
鹿児島大学大学院
医歯学総合研究科 研究科長
田川 義晃
(令和7年4月1日就任)
大学は、「知」を生み出す場、「知」を実践する場、「知」を集積する場、「知」を次の世代に引き継いでいく場の拠点です。鹿児島大学大学院医歯学総合研究科は、医学、歯学、医療全般の先端技術、生命科学、心身の健康と疾患に関する知識を生み出す、実践する、国内・国外で生み出された知識を集積する、それを次世代に伝えて人材を育成する、そのような場の地域拠点として、社会からの信頼のもとに運営されている組織と認識しています。
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科は、平成15年4月に大学院医学研究科と大学院歯学研究科を統合して設置されました。医学と歯学の連携のもとに、疾病予防と先端医療を目的とした博士課程2専攻(健康科学専攻、先進治療科学専攻)14講座が編成され、翌16年には修士課程として医科学専攻が設置されました。その後、連携講座や研究センター等の設置が進み、現在は、博士課程として健康科学専攻5講座(1プロジェクト講座を含む)と先進治療科学専攻12講座(2プロジェクト講座、2連携講座を含む)、修士課程医科学専攻、8寄附講座、3共同研究講座、8センターからなる教育・研究組織となっています。また、本学のヒトレトロウイルス学共同研究センターの5分野も本研究科を兼務しています。
各講座は医学・歯学領域の重要な研究課題について、独創性の高い国際レベルの先端的研究や地域の特性を生かした研究を行っています。本研究科でこれまでに行われた独創性の高い研究としては、成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)に関するウイルス研究、シトリン欠損症やファブリ病心筋症に関する研究、トロンボモジュリンや肝細胞増殖因子(HGF)に関する研究、癌遺伝子治療の開発と実用化研究などがあり、それらの成果は高く評価されています。また、プロジェクト講座や連携講座では、柔軟かつ機動的な研究組織を編成し、地域の特性や先端性を活かした研究を行っています。奄美をモデルにした健康長寿社会の確立に関する研究やミニブタを用いた異種移植、疾患動物モデルに関する研究などは、国内外から注目を集めています。加えて、鹿児島から東アジア・南太平洋に至る地域、特にイスラム文化圏を対象にした国際共同研究も積極的に行っており、海外研究拠点の構築を目指しています。さらに、鹿児島大学が総合大学である利点を生かした学際的研究も積極的に行っています。今後も重点的に取り組む課題として、がんの基礎研究・臨床研究の成果に基づいたトランスレーショナルリサーチや全国的に数少ないユニークな研究分野(心身医療学、リハビリテーション医学、国際島嶼医療学)を活かした教育研究拠点の形成があります。これらの研究のために設置された先端的がん診断治療センターや国際統合生命科学研究センターでは、現在、学際的な研究を展開しています。さらに平成30年には本研究科の基礎研究で創出される創薬・医療機器・再生医療等製品等のシーズを、実用化までつなげる研究開発を行うことを目的とした南九州先端医療開発センターが設置され、活動しています。
医歯学総合研究科の卓越した研究レベルを背景に、博士・修士課程では学生の多様なニーズに沿った履修コースを設定し、国際化に対応した教育を行っています。本研究科では、医の倫理観を備えた生命科学領域の研究者、高度専門職医療人を育成し、健康寿命の延伸に寄与するとともに、地域・国際社会の発展に大きく貢献していきたいと考えております。