2025 年6月に開催された第63回日本小児歯科学会大会において、鹿児島大学病院発達系歯科センター小児歯科稲田絵美講師と大学院医歯学総合研究科小児歯科学分野の黒仁田莉子さん(博士課程)が優秀発表賞を受賞しました。
本賞は最先端のバイオロジー研究試薬を開発製造しているBioLegend社/Tomy Digital Biology社が、ライフサイエンス研究(免疫、癌、癌免疫、再生、感染症、神経科学等の研究分野)をおこなう若手研究者が取り組むユニークな研究の推進を応援するものです。
稲田講師は、ヒト乳歯歯髄由来iPS細胞を用いて、in vitro環境下で三次元構造体の形成と分化能評価を可能にする新しい器官培養法を開発しました。従来はヌードマウスを用いたin vivo 評価が主流でしたが、本研究ではMatrigelと膜フィルターを用いた簡便かつ低コストな培養系を構築し、iPS 細胞の多能性をin vitroで効率的に評価できる技術として高く評価されました。
黒仁田さんは、稲田講師が構築した器官培養法を応用し、in vitro環境下でヒト乳歯歯髄由来iPS細胞から骨芽細胞・神経細胞・脂肪細胞への分化誘導に成功しました。本研究では、iPS細胞から形成した胚様体を各種分化誘導培地とMatrigelを用いて器官培養しました。各細胞種への分化を免疫染色などで確認し、分化誘導の有効性と再現性を示した点が注目されました。これにより、ヒト乳歯歯髄由来iPS細胞を用いた多系統分化誘導の可能性が実証されました。
これらの研究は、iPS細胞の分化メカニズムの理解を深めるとともに、疾患モデルの構築や再生医療への応用に向けた基盤技術として高く評価されており、小児歯科領域における細胞工学的アプローチのさらなる発展が期待されます。
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